偏愛モノ③ 『CA4LAのウールキャップ』

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生成りのシーツの上に置かれたブラウンのキャスケット

最終的に自分の手元に残したいものがある。それは有名なブランドでもなければ、決して高価なものでもない。

ちょうど10年前、妻と帽子専門店の『CA4LA』に立ち寄った。当時、僕はとにかく帽子が合わないという思い込みを持っていたのだが、暇つぶし程度の気持ちでお店に入って試着をした。けれど、そこで妻が手に取った一つの帽子が、僕の運命を変えてしまった。

あまり見かけない愛嬌のある形に、柔らかいブラウンの色合い。ブークレのようなモコモコした素材感。それはたまらなく可愛らしく、僕が愛用していたフランク・リーダーのワークウェアとも、驚くほど相性が良さそうだった。 自分一人ではまず手に取らなかったであろうその帽子を、僕はその場で即決した。提案してくれた妻は、今でも先見の目があると思っている。

それをきっかけに、僕の帽子への物欲は一気に加速した。 ジェームス・ロックのハット、ジョナサン・リチャードのキャスケット、ロレールのベレー帽……。名だたる名品からカジュアルなキャップまで、一時クローゼットはたくさんの帽子で溢れかえっていた。

でも、今はそれらの名品は一つも残っていない。 結局、手元に残ったのは、最初に買った5、6千円のこいつだけだった。
気づけばもう、10年来の付き合いになる。 超一流の名品たちが次々とクローゼットを去っていく中で、この名もなき帽子だけが生き残ったのだ。よく考えたら、これってすごいことだよなぁ。しかも、年齢を重ねた今の自分の方が、被りこなせている気がしなくもない。

結局、自分の日常に馴染む「リアルなもの」だけが、最後には残っていくんだろうなぁ。 今クローゼットにあるお気に入りの服たちも、普段使いしづらいものは、いずれ手放していくことになるのかもしれない。

これからの自分が洋服とどう向き合っていくべきか。その大切なヒントを、僕は10年前に買った帽子から教わった気がする。




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