偏愛モノ④ 『CA4LAのウールキャップ』

生成りのシーツの上に置かれたブラウンのキャスケット

最終的に自分の手元に残したいものがある。それは有名なブランドでもなければ、決して高価なものでもない。

ちょうど10年前、妻と帽子専門店の『CA4LA』に立ち寄った。当時の僕は、とにかく帽子が合わないという思い込みをがあり、ほんの暇つぶし程度の気持ちでお店に入った。

そこで妻が手に取った一つの帽子が、僕の運命を変えてしまった。

あまり見かけない愛嬌のある形に、柔らなブラウンの色合い。ブークレのようなモコモコした素材感が、たまらなく可愛い。僕が愛用していたフランク・リーダーの洋服とも相性が良さそうだった。 自分だったらまず手に取らないその帽子を、僕はいつの間にか即決していた。

このことをきっかけに、帽子への物欲は一気に加速していく。 ジェームス・ロックのハット、ジョナサン・リチャードのキャスケット、ロレールのベレー帽……。名だたる名品からカジュアルなキャップまで、一時クローゼットはたくさんの帽子で溢れかえっていた。


現在、それらの帽子は一つも手元にない。残ったのは、最初に買った6千円のこいつだけだった。
気づけばもう、10年来の付き合いになる。 超一流の名品たちが次々とクローゼットを去っていく中で、この名もなき帽子だけが生き残ったのだ。

これってすごいことだよなぁ。

結局、つい手に取ってしまうものだけが、最後に残っていくのかもしれないな。




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